経営者にとっての相続・事業承継

第1 “事業承継”というキーワードを聞いた方へ…

 後継者不足による廃業といった話を耳にすることが多くなってきました。また、事業承継について官民が協力して対策を講じるといったニュースも多く配信されています。とはいえ、この記事を読まれている方には、「まだまだワシは若いので、大丈夫」と思われている方もいるのではないでしょうか。

 もちろん、元気で経営を続けていただくこと、これは重要なことです。ただ、残念なことに法人は永続する余地はありますが、個人はどこかで永眠します。経営者・社長に万一のことがあった場合、その時点から事業承継対策を講じることは厄介かつ困難を伴い、下手をすれば有効打を打てないことさえあります。

 残された従業員や取引先、あるいは家族のことを考えれば、元気なうちに少しずつでも対策を講じたほうがよいに決まっています。このことに気が付いた経営者・社長は、元気なうちから経営課題として自身の相続・事業承継対策に取り組まれています。

相続・事業承継対策を考える上でのポイントは次の3点となります。

 ①後継者をどうするのか

 ②資産の承継をどうするのか

 ③相続対策をどうするのか

 

第2 “事業承継”を検討したいが、何を意識すればよいのか…

 上記第1で記載した3つのポイントについて、何を意識すればよいか箇条列挙してみました。

1 後継者をどうするのか

 まず、後継者を決定できているかが最重要課題となります。

(1)後継者を決めている場合

 ・親族であれば、その正当性・権威を示すことができるのか。
 ・親族以外のうち役員・従業員であればMBO・EBO手続きを、第三者であれば自社株譲渡の手続きを適切に実行できるのか。

(2)後継者を決めていない・後継者が見つからない場合

 ・M&Aを検討しているのであれば、適切なアドバイザーを選任できるのか、M&A形態(株式譲渡、事業譲渡、合併等)をどうするのか、売りやすい会社になるためにはどうすればよいのか。
 ・将来的に廃業を検討しているのであれば、ステークフォルダーにできる限り影響を与えない方法で進めることができるか

 

次に、後継者の育成についても気配りする必要があります。

 (1)社外での経験
  ・社外での経験が事業承継に悪影響を与えないか(後継者が書いた入社時誓約書に競業禁止があり問題となった事例も)

 (2)社内での経験
  ・社内での信頼醸成や地位・役職の配置を適切に行えているか

 (3)環境の整理
  ・先代経営陣の引退(株式譲受、退職慰労金の支払い等)はどのように進めるのか
  ・次世代経営陣の育成を誰が担当するのか
  ・経営者自身が覚悟できているか

 

2 資産の承継をどうするのか

まず、自社株の現状把握ができているかが重要です。

(1)現時点での株価の把握

 ・評価下げ対策は実行可能か(資産計上されているものの法的整理など)

(2)誰が株主か、持株数の把握

  ・株主名簿の整理は実行可能か(名義株の解消、少数株主権への対応)

 

 次に、後継者への自社株集中を目指すことになります。

 (1)経営権の承継
  ・直接承継を行う場合の問題点を解消できるか(後継者への自社株贈与に伴う暦年贈与、相続時精算課税制度の適用と遺留分侵害への対応、遺言の活用の可否、納税猶予制度の活用の可否、後継者による直接買取りと資金創出など)
  ・間接承継を行う場合の問題点を解消できるか(金庫株の買取の可否、従業員持株会や投資育成会社の活用、名義株の解消など)
  ・その他(種類株式への対応など)

 

3 相続対策をどうするのか

 まず、代表的な2つの方法について理解しておく必要があります。

(1)相続による承継

  ・納税問題
  ・遺産分割問題(遺言書がない場合、非後継者が自社株を相続するリスク、遺言書がある場合、遺留分侵害への対応など)

(2)贈与による承継

  ・暦年贈与、相続時精算課税制度、納税猶予制度の活用など

 次に、具体的な経営者個人の事業用資産の承継について意識する必要があります。
  ・事業用不動産、会社への貸付金、連帯保証債務、会社からの借入金の承継など

 

第3 “事業承継”対策の現状は…

 私は弁護士であるため、法務的な観点から事業承継に関するアドバイスを行っています。
 しかし、上記第2でも触れたとおり、実際には横断的な問題(法務のみならず税務や労務への対応、それ以外にも社内でのパワーバランスを含めた人間関係やコミュニケーション論なども含むみます)を検討する必要があります。

 このような検討を行うためには、まず検討課題を抽出する必要があるところ、一朝一夕で対応できるわけではありません。このため、(表面上は)問題が顕在化していない早い段階から、その後の経営が円滑に進められる体制作りも含めて、戦略的に行っていくことが肝要です。

 また、対応を誤ると、後継者への円滑な承継がされずに内部紛争に発展してしまったり、多額の税金の支払いが発生してしまったりと、企業の経営に大きな影響を与えてしまいます。

 残念ながら、私はこれまでに円滑な事業承継ができず、事業が傾いてしまうほどの甚大なトラブルに発展してしまった例を含め、数多くのトラブル例を見てきました。

 

第4 “事業承継”を本気で取り組みたいのであれば…

 上記第1~第3までで色々と書きましたが、何よりもまずは、経営者・社長が「事業承継を実行する」という覚悟がないことには話がスタートしません。

この覚悟を決めていただいてから、

①いつまでに承継するのか期日を決めること

②誰を後継者にするのか決めること


この2点を決めることがポイントです。

 その上で、次の世代のためのフレームづくり(後継者教育、資産承継、相続対策など。詳細は上記2を参照)を着実に構築・実行していくことになります。

 

第5 “事業承継”について当事務所がご提供できること

 当事務所ではこれまでに事業承継に関するご相談をお受けしてきました。そして、社労士や税理士の先生方とも連携し、企業の永続的な成長をサポートのため日々対処しています。

 思い立ったが吉日、事業承継について少しでも気になったら、まずは一度ご相談ください。

 そして、1回目のご相談を踏まえ、経営者・社長において十分に検討してください。その上で引き続き当事務所に相談したいと思われたのであれば、再度ご連絡ください。他の専門家に依頼するのであれば、当事務所への連絡はいりません(当事務所から積極的な営業活動を行うことはありません)。

 考えなければならないことは多いですが、1つ1つ優先順位をつけて着実に実行できるよう当事務所ではサポートします。
なお、当事務所では、1件1件に丁寧かつ確実な対応を行うことを目標としています。したがって、有料でのご対応となることご理解願います。(すべての専門家に該当するわけではありませんが、無料相談を通じて優良顧客のみを選別しようとする対応は、当事務所では行っておりません)。