オーナー指名の後継者に親族等が反対する

オーナーが子供を後継者に指名し、その子供が後継者として活動するために必要な準備・対策を講じるというものが事業承継の典型例です。もっとも、ちょっと変わった事例に接することもあります。一部内容を変更していますが、次のような事例もありました。

相談企業の業種・規模

◆業種:流通業

◆規模:従業員数30名以下

相談経緯・依頼前の状況

現経営者には子供2人(息子、娘)がいる。もともとは息子に会社を継がせたいと考えていたが、息子は遊んでばかりで事業の手伝いなど一切行わない。一方、娘は会社の従業員と結婚し、当該従業員は事業遂行に協力的である。

そこで、現経営者は、後継者を当該従業員(義理の息子)に指名したところ、息子と現経営者の配偶者が猛烈に反対し始めた。

解決までの流れ

お問い合わせいただいた際、1回目の法律相談前までに、①株式の保有状況(株主名簿が整備されているか)、②事業用資産の名義(個人or法人のどちらに帰属しているのか)、③組織図(利害関係人はどのように配置されているのか)を準備するようお願いしました。

そして、1回目の法律相談において、法的観点からの後継者指名(株式を後継者に保有させる)はもちろんのこと、従業員等の社内及び取引先等の社外関係者に対して正当性・権威を示す観点からの後継者育成を行うことを提案し、これについては現経営者が時間をかけて実行することになりました。

一方、後継者指名に反発する配偶者及び息子に対しては、会社経営に口出しはさせないという現経営者の強い意思を表明するべく、あえて弁護士名義の内容証明郵便を送付し、牽制するという方法をとりました。

後継者指名につき社内及び社外の了承が得られた段階で、配偶者及び息子は勝ち目がないと判断したのか、自らが保有する株式の買取を提案してきましたので、株式買取手続きを実行し、作業終了となりました。

解決のポイント

配偶者及び息子は少数ながら株式を保有していたため、法的観点からは、これを如何にして処理するかが課題となっていました。本件では任意の買取で対処できましたが、現経営者側は強制買取手続きを視野にタイミングを見計らっていたというのが実情です。

一方、正当性・権威については、家族問題をどこまで公にして説明するのか腐心しました。最終的には現経営者が決断し、家族問題であっても必要な情報は積極的に発信するというスタンスをとってくれたため、社内・社外関係者にありのままの説明を行うことができたというのがポイントとなりました。

なお、対立関係になったとはいえ、現経営者も実の息子である以上、経営に関与はできないが、事業遂行による利益のうち一部については息子が得られるような方策も実は講じており、このような配慮も解決を図る上で有用なものとなりました。

解決までに要した時間

◆約2年(1回目の法律相談から株式買取り手続きの実行完了まで)

当事務所ならではのサービス

後継者指名で争いが生じた場合、現経営者を味方につけること、持ち株比率を意識することは当然のことなのですが、後継者の応援部隊を如何にして構築し、実働してもらうのかが重要なポイントであると認識しています。

当事務所では、法的観点だけからのアドバイスにとどまらず、組織運営がうまく機能するよう様々な施策を提案し、実働の手助けを行うことが可能です。