指名した後継者を後日変更する

オーナーが子供を後継者に指名し、その子供が後継者として活動するために必要な準備・対策を講じるというものが事業承継の典型例です。もっとも、ちょっと変わった事例に接することもあります。一部内容を変更していますが、次のような事例もありました。

相談企業の業種・規模

◆業種:製造業

◆規模:従業員数10名以下

相談経緯・依頼前の状況

現経営者が後継者として長男を指名したところ、指名以降の長男の態度が傲慢となった。何度か指導をしたものの、長男の態度が改まらないことから、現経営者は後継者指名を撤回した。この結果、現経営者と長男の関係は険悪となり、長男が退職する事態となった。

なお、長男には一部の事業資産(株式、不動産など)を譲渡していた。

解決までの流れ

当事務所へのお問い合わせ後、1回目の法律相談の際に、会社の歴史、経営状態、事業資産の内容、役員・従業員との関係性などにつき、詳しくお話をお伺いしました。また、お伺いした内容を踏まえ、2回目の法律相談実施前までに、既に長男に譲渡してしまった一部事業資産の取戻し方法について、弁護士において事前に検討することを確認しました。

2回目の法律相談の際、真正面から取戻しを可能とする法的方法は残念ながら考えにくいこと、交渉による解決を図るほかないことをご説明し、具体的な交渉方針を検討しました。

その後、ご相談者様の代理人弁護士として長男宛に通知書を送付したものの、全く応答がありませんでした。そこで、話し合いの機会を求めて調停手続きの申立てを行ったところ、長男側にも代理人弁護士がつくことになりました。

調停手続きをベースとしつつ、代理人弁護士間での協議により、ご相談者様が譲渡済み事業資産を買取ることで合意し、買取手続き終了後、作業完了となりました。

解決のポイント

現経営者と長男との関係が既に悪化している状況下で、現経営者自らが事態解決のために動いたとしても、感情的なやり取りとなってしまい、更なる事態悪化を招くことが危惧されました。

そこで、早期に代理人として選任していただき、弁護士自らが動くことで、相手に交渉の場に参加させるという方針を組み立て実行しました。

なお、現経営者が後継者を指名した段階では、後継者との関係が悪化することなど想定していないため、後継者指名を撤回した後の問題を、法律で一刀両断に解決できることは困難と言わざるを得ません。そのため、一定の金銭負担が必要であることをご説明し、納得していただいてから手続きを進めました。

解決までに要した時間

◆約3年(第1回相談から買取手続き終了まで)

当事務所ならではのサービス

法的請求が成り立たない場合、そこで思考停止する弁護士も一定数いるようです。しかし、法的に難しいのであれば、相手の心理状態を予測しながら、相手に紛争状態を解消するのが望ましいということを理解させたうえで、協議解決を目指すといった対処法も検討に値します。

当事務所の代表弁護士はこれまでに数多くの示談折衝を行ってきて実績があります。ノウハウと経験知を活用しながら、法律論だけでは難しい事案についても、代替の対処法をご提案することが可能です。