事業承継に必要な契約書とは?作成のポイントを弁護士が解説
【ご相談内容】
事業承継の実施を念頭に、株価対策・相続税対策などを税理士と相談しながら進めています。ある程度の税金対策は見通しが立ってきたため、手続きを進めるに当たり必要な契約書を揃えようと税理士に依頼したところ「専門外で分からない」という回答が返ってきました。
どのような契約書が必要となるのか、教えてもらえないでしょうか。
【回答】
事業承継を実施するに際し、一部を除き契約書が絶対に必要という訳ではありません。
ただ、事業承継を進める場合、多額のお金が移動しますし、様々な権利義務関係を整理する必要がありますので、事実上は契約書が必須となります。
そこで、本記事では、事業承継における3パターン、すなわち親族承継、従業員承継、第三者(M&A)承継に分類し、それぞれ必要と考えられる契約書の内容とポイントにつき解説を行います。
なお、参考となるサンプル書式を記載していますが、分かりやすさを重視し、わざと簡略化した内容となっています。
このサンプル書式はあくまで骨格に過ぎませんので、事案に応じた肉付けが必要であること、最終的に弁護士に相談し契約書を作成したほうが無難であることをご理解いただければと思います。
【解説】
1.親族への事業承継の場合
(1)株式の譲渡について(法人の場合)
事業承継を検討するにあたって、まずもって必要な契約書は株式譲渡に関するものとなります。ただ、株式譲渡の実行時期、すなわち現経営者が生存中に実行する場合と、現経営者が死亡してから実行する場合とでは、必要となるものが異なります。
・現経営者が生存中に実行する場合
法人の場合、事業承継を行うには株式を後継者に譲渡することが何より大切です。
したがって、株式譲渡に関する契約書、すなわち株式売買契約書又は株式贈与契約書が必要となります。例えば、株式売買契約であれば、次のような契約書が考えられます。
【参考条項例】
株式譲渡契約書 譲渡人である●●(以下「甲」という)と譲受人である■■(以下「乙」という)とは、次の通り契約を締結する。
第1条(株式の特定) 甲は乙に対し、次の株式を×年×月×日に売渡す。 (発行者)×× (種類)×× (株数)××
第2条(支払い) 乙は甲に対し、前条に定める株式の売買代金として×円を、×年×月×日限り支払う。
第3条(株券の引渡し) 甲は、乙による前条に定める代金支払いと同時に、乙に対し、当該株式を表象する全ての株券を引き渡す。 |
上記の参考条項にある第3条ですが、最近では株券不発行会社も多くなっているので、株券不発行会社であれば不要な条項となります。ただ、事業承継の対象となる法人は、設立から数十年経過しているところが多いところ、おそらくは株券発行会社として取り扱われることがほとんどだと思われます。
次に、上記の参考条項には記載しなかったのですが、事業承継の対象となる中小企業の場合、通常は株式譲渡制限会社ですので、株式譲渡につき取締役会等の承認が必要となります。また、株式を譲渡しただけでは不十分であり、株主名簿の名義書換が必須となります。これらを意識させる目的であえて明文化することも一案です。
・現経営者死亡時に実行する場合
現経営者が生存中は株式を譲渡したくないと考える一方、死亡してからはスムーズに株式を後継者に譲渡したいと考える場合、遺言書の作成が必須となります。
例えば、次のような遺言書が考えられます。
【参考条項例】
遺言書 遺言者●●は次の通り遺言する。
第1条(目的財産) 遺言者は、次の株式の×株を長男■■(×年×月×日生)に相続させる。 ××株式会社 普通株式
第2条(特別受益の持戻し免除) 遺言者は、×年×月×日に行った、長男■■に対する株式(××株式会社の普通株式)の贈与については特別受益としての持戻しを免除し、同贈与に係る株式の価額を相続財産に加算せず、長男■■の相続分から控除しないものとする。 |
上記の第2条で定めた特別受益の持戻し免除については誤解が多いのですが、これを定めたから遺留分侵害の問題が解消されるわけではありません。ここでは解説を省略しますが、特別受益と遺留分は全く別問題であることに注意が必要です。
なお、現経営者が遺言書を作成しなかった場合、又は遺言書を作成していても何らかの理由で当該遺言書が無効となった場合、株式は遺産分割の対象となります。この場合、次のような遺産分割協議書を作成することが考えられます。
【参考条項例】
遺産分割協議書 被相続人●(×年×月×日死亡、本籍地××)の遺産につき、相続人■、▲、◆は、遺産分割協議の結果、被相続人の遺産を次の通り分割した。
1.■は次の株式を取得する。 ××株式会社 普通株式 ×株 2.▲は次の不動産を取得する。 (省略) 3.◆は次の現預金を取得する。 (省略) 4.相続人全員は、各相続人がそれぞれ取得した遺産についての名義変更手続きが円滑に行われるよう相互に協力する。 |
なお、遺産分割ですんなり株式を後継者に帰属させることで話がまとまればよいのですが、なかなか上手くいかない場合もあります。株式の帰属が定まらないことによる経営の混乱・空白を防止するためにも、事前に遺言書を作成する(なお、最近では遺言代用信託と呼ばれるものも利用され始めています)ことを強くお勧めします。
(2)事業の譲渡について(特に個人事業の場合)
現経営者が法人を設立し、事業用資産の名義が法人名義となっている場合、当該法人の株式を後継者に譲渡することで、事業承継を実行することが可能となります。
しかし、法人ではない個人事業の場合、事業承継を実行するためには、その「事業」自体を後継者に譲渡する必要があります。この場合に用いられるのが事業譲渡という方法なのですが、要は「事業」を売却物に見立て、当該事業を売買の対象にするというものです。例えば、次のような事業譲渡契約書が考えられます。
【参考条項例】
事業譲渡契約書 譲渡人である●●(以下「甲」という)と譲受人である■■(以下「乙」という)とは、次の通り契約を締結する。
第1条(目的) 甲は乙に対し、×年×月×日(以下「本件譲渡日」という)に、次の事業(以下「本件対象事業」という)を譲渡し、乙はこれを譲受ける。 ①(省略)
第2条(譲渡財産) 1.本件対象事業に含まれる財産は、別紙に記載する資産、負債及び契約上の地位とする。 2.前項に定める財産の引渡し日は、本件譲渡日とする。
第3条(代金) 1.本件対象事業の対価は、金×円とする。 2.乙は甲に対し、本件譲渡日において、前項に定める対価を支払う。
第4条(公租公課等の負担) 本件対象事業に対して発生する固定資産税等の公租公課、水道光熱に要する費用、保険料等については、本件譲渡日の前日までの分は甲が負担し、本件譲渡日以降の分は乙が負担する。
第5条(事業の運営) 甲は、本契約締結から本件譲渡日までの間において、本件対象事業に関し法令等を遵守し、善良なる管理者の注意をもって本件対象事業の運営を継続する。
第6条(損害賠償) いずれかの当事者が本契約に違反し相手方に損害を与えた場合、当該当事者は相手方が被った損害を賠償しなければならない。 |
上記は親族間という関係を考慮し、非常にシンプルな内容に留めていますが、その他にも、現経営者が事業のために締結している契約上の地位の移転・承継をどのように実行するのか、従業員の承継はどのように実行するのか、登記等の対抗要件が必要な資産は誰の費用負担にて実行するのか、譲渡人に対して競業禁止義務を課すのか、契約解除の条件を定める必要はないか等々を定めることが多いと考えられます。また、M&Aが関係する事業譲渡の場合、さらに表明保証条項なども定められることになります。
ところで、事業譲渡契約とは言いつつも、実態は個々の財産(例えば、不動産、機械工具、什器備品などの動産、売掛等の債権、知的財産権など)の売買に過ぎません。このため、事業承継に際し、現経営者が保有する事業用資産の一部のみ譲渡対象とすれば足り、むしろ譲渡不要のものが多いというのであれば、譲渡対象となる個々の財産の売買契約書等を作成すれば足ります。
なお、法人の場合であっても、事業用資産が現経営者個人の名義となっている場合、同様に個々の財産の売買契約書等を作成する必要があります。売買契約書については、上記1.(1)で解説した株式譲渡契約書を参照していただき、ここでは現経営者より事業用資産を借り受ける契約書を検討します。例えば、次のようなものが考えられます。
【参考条項例】
賃貸借契約書 貸主である●●(以下「甲」という)と借主である■■(以下「乙」という)とは、次の通り建物賃貸借契約を締結する。
第1条(物件) 甲は乙に対し、次の建物(以下「本件建物」という)を賃貸し、乙はこれを賃借する。 (建物の表示:省略)
第2条(使用目的) 乙は、本件建物を××の目的で使用し、その他の目的では使用しない。
第3条(賃貸借期間) 本契約の期間は、×年×月×日より2年間とする。なお、期間満了の3ヶ月前までに相手方に対して更新しない旨通知した場合を除き、本契約は契約期間満了日の翌日から更に2年間同一の条件をもって更新するものとし、以後も同様とする。
第4条(賃料) 乙は、1ヶ月当たりの賃料×円を、毎月末日限り翌月分を支払う。
第5条(解約) 1.乙は、本契約期間中、甲に対して2ヶ月前までに書面による解約申入れを行うことにより、本契約を解約することができる。 2.乙は、前項の解約申入れに代えて、2ヶ月相当分の賃料を甲に支払うことにより、本契約を即時解約することができる。
第6条(明渡し) 本契約の終了と同時に、乙は、本件建物を原状に復した上で甲に明け渡さなければならない。 |
本来であれば、後継者は事業用資産を買い上げたいところなのですが、例えば、事業用資産である建物が現経営者の自宅にもなっており、現経営者が引き続き居住するという場合もあり得る話です。この場合、上記のような賃貸借契約(場合によっては使用貸借契約)を締結し、建物を後継者が使用できる法的根拠を整備する必要があります。
2.従業員等(親族以外)への事業承継の場合
M&A手続きを踏まずに従業員等の親族以外の第三者へ事業承継を行う場合、基本的には前記1.で記載した契約書を用いることで対応が可能です。
ただ、親族への事業承継の場合、一定の信頼関係があるため、合意事項であってもあえて契約書に明記しないということが多々あるのですが、従業員等の第三者への承継の場合、ある程度の信頼関係があるとはいえ、しょせんは他人です。
したがって、合意事項についてはなるべく契約書に記載したほうが無難です。
(1)後継者による買取資金の確保
従業員等の親族以外の第三者に事業承継を行うに当たり、株式譲渡や事業用資産の譲渡を実行することになるのですが、ここでネックとなるのが後継者に買取資金がないという点です。
この問題への対処法は色々あるのですが、1つの方法として、現経営者が従業員に貸付を行い、分割弁済を行うというものがあります。この場合、次のような金銭消費貸借契約書を締結することが考えられます。
なお、株式や事業用資産の売買契約と構成し、支払方法を分割とするという方法も考えられます。しかし、売買の対象となる株式及び事業用資産の権利移転時期が後ろにずれ込みやすいこと(例えば支払い完了後の権利移転)、先に権利移転を実行したとしても支払いが滞った場合に契約解除による株式及び事業用資産の取戻しが発生することからすると、確実な事業承継に支障を来すことになります。このため、少なくとも後継者の立場からすれば、単純な金銭消費貸借契約にする方が無難と考えられます。
【参考条項例】
金銭消費貸借契約書 貸主である●●(以下「甲」という)と借主である■■(以下「乙」という)とは、次の通り契約を締結する。
第1条(貸付) 甲は乙に対し、本契約に基づき金●円を貸し付けたことを相互に確認する。
第2条(弁済期限・方法等) 乙は、甲より借り受けた金員を甲指定の口座に振り込んで支払うものとし(振込費用は乙の負担)、弁済額及び弁済期限については次の通りとする。但し、本条本文による約定弁済のほか、乙は期限前に任意の金額を随時弁済できる。 (弁済額、弁済期限については省略)
第3条(期限の利益喪失事由) 次に該当する事由が生じた場合、乙は、甲からの通知催告を要しないで当然に期限の利益を失い、直ちに残額を弁済しなければならない。 ①約定の支払期限までに2回以上弁済を遅滞したとき ②支払停止もしくは支払不能の状態に陥ったとき ③第三者より差押え、仮差押え、仮処分、その他強制執行もしくは競売の申立、又は公租公課の滞納処分等を受けたとき ④破産、特定調停、民事再生・会社更生手続開始の申立等の事実が生じたとき |
ちなみに、(連帯)保証人を付ける場合もあり得る話です。ただ、2020年4月の民法改正により、(連帯)保証契約を締結するに際しては色々と複雑となりました。単純に(連帯)保証人の署名押印さえもらえば問題ないと考えるのは間違いであることに注意が必要です。
(連帯)保証契約については、ご参考までに次の記事をご参照ください。
連帯保証契約書を作成する際に注意するべき事項について、弁護士が解説!
(2)事業承継失敗時の株式の買戻し
従業員等の親族以外の第三者承継の場合、後継者の買取資金不足の問題もあり少しずつ株式等を譲渡するという方法が取られる場合があります。
これ自体は特に問題ないのですが、親族承継の場合と比較して、従業員等の第三者承継の場合、後で事業承継が実行不可となる(失敗に終わる)という確率が高いため、この点を考慮した対策を講じる必要があります。
例えば、売買契約書等に次のような特約条項を定めておくということが考えられます。
【参考条項例】
※甲:譲渡人、乙:譲受人
第×条(特約) 1.事由の如何を問わず、乙と株式会社●との労働契約又は委任契約が終了した場合、乙は甲に対し、乙が保有する同社の株式を直ちに譲渡する。 2.前項に定める譲渡対価は、乙が当該株式を購入した金額と同額とする。 |
上記は、主として事業承継が完了する前に後継者が退職・退任した場合を想定していますが、後継者は引き続き在籍するものの、後継者指名を現経営者が取り消した場合を想定して定めるといったことも考えられます。
3.M&Aによる事業承継の場合
M&Aを用いて事業承継を行う場合、
①秘密保持契約書を取り交わし、相互に情報を出し合って事前検討を行う
②M&A実行に向けて本格的な交渉を行う段階で基本合意書を締結する
③交渉妥結後、M&A手続き実行のための契約書を締結する
といった最低でも3種類の契約書を締結することが通常です。
(1)秘密保持契約書
秘密保持契約書は様々な場面で用いられ、サンプルも世にたくさん出回っていることから、あえてここで参考条項例をあげるまでもないかと思います。
なお、詳細についてはこちらの記事をご参照ください。
(2)基本合意書
例えば、株式譲渡によるM&Aを検討している場合、株式譲渡に関する交渉をスタートさせることを確認する目的で、次のような基本合意書を締結することがあります。
【参考条項例】
基本合意書 ●●(以下「甲」という)と■■(以下「乙」という)とは、甲の乙に対する株式譲渡を検討するに当たり、次の通り契約を締結する。
第1条(基本合意) 甲及び乙は、本契約締結後、甲が保有する××株式会社の株式×株(以下「本件株式」という)を乙に譲渡することを目的として、以後協力して手続きを進めることに合意する。
第2条(譲渡予定日) 甲及び乙は、本件株式の譲渡を×年×月×日までに実行するものとし、具体的な日時は甲乙協議の上定める。
第3条(譲渡代金) 本件株式の譲渡対価は、本契約締結後に行われる調査等により開示された情報に基づき、甲乙協議の上定める。
第4条(独占交渉権) 甲は、乙との間で本件株式の譲渡が実行不可能であることを相互に確認するまでの間、乙以外の第三者との間で本件株式の譲渡、合併、会社分割、事業譲渡、資本提携その他の本件株式の譲渡と相反する一切の交渉及び合意を行わない。
第5条(解除) 甲又は乙は、次の定める事由に該当した場合、本契約を解除することができる。 ①相手方が本契約に違反したとき ②××株式会社の資産および負債の内容が、本契約締結時に開示された内容と著しく異なる状況であり、当該状況を甲乙協議により解消することができないと判断されるとき (以下省略)
第6条(管轄裁判所) 本契約に関する一切の紛争については、××地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。 |
上記のサンプルはかなり内容を簡略化かつ絞り込みを行っています。実際にはもっと詳細な内容が定められ、契約書の枚数が10枚を超えることも珍しくありません。
ちなみに、上記のサンプルで一番のポイントとなるのは「第4条(独占交渉権)」となります。事業承継を行おうとする譲渡人側からすれば、大きな制約となるのですが、実際の現場実務の状況からするとこの制約は受け入れざるを得ません。むしろ譲渡人側としては、独占交渉権が喪失する場面を色々と想定し、明文化することに力を注いだ方がベターと考えられます。
(3)株式売買(譲渡)契約書
株式譲渡契約書は上記1.(1)で記述しているのですが、M&Aによる株式譲渡の場合、色々と複雑な条項が追加されることが通常です。例えば、次のような表明保証条項等を定めることが一般的です。
【参考条項例】
※甲:譲渡人、乙:譲受人
第×条(表明・保証) 1.甲は、以下の各事項が、本契約締結日及び譲渡日において真実かつ正確であることを表明し、保証する。 (1)甲は、本契約の締結及び履行につき、法令、及び定款その他の社内規則上必要とされる一切の手続を完了していること。 (2)甲による本契約の締結又はその履行は、法令もしくは定款その他の社内規則又は甲を当事者とする第三者との契約に違反するものではないこと。 (3)本契約、本件事業譲渡又は譲渡資産に悪影響を与えるおそれのある係属中の訴訟、調停、仲裁その他の司法手続は存在せず、かつ発生するおそれもないこと。 (4)譲渡資産について、瑕疵担保責任、債務不履行責任、不法行為責任、契約不適合責任及び担保権等の負担は存在しないこと。 (5)従業員との間において、賃金や時間外労働の未払い等の紛争はなく、労務問題をめぐり監督官庁からの指導や是正勧告を受けていない、かつそれらのおそれもないこと。 (6)受注先から、瑕疵担保責任及び契約不適合に基づく修補の要求や代金減額の申入れを受けていないこと。 2.乙は、以下の各事項が、本契約締結日及び譲渡日において真実かつ正確であることを表明し保証する。 (1)乙は、本契約の締結及び履行につき、法令、及び定款その他の社内規則上必要とされる一切の手続を完了していること。 (2)乙による本契約の締結又はその履行は、法令もしくは定款その他の社内規則又は乙を当事者とする第三者との契約に違反するものではないこと。
第×条(前提条件) 1.本件事業譲渡の乙の履行に際し、以下の各事項を前提条件とし、譲渡日において以下の各事項のうち一つでも成就していない場合は、甲及び乙が別途合意しない限り乙は本件事業譲渡の履行義務を負わないものとする。 (1) 甲が、第×条に定める表明保証事項のすべてについて違反していないこと。 (2) 甲が、第×条に定める各項について、これに反する行為を行っていないこと。 2.本件事業譲渡の甲の履行に際し、以下の各事項を前提条件とし、譲渡日において以 下の事項が成就していない場合は、甲及び乙が別途合意しない限り、甲は譲渡資産の引渡義務を負わない。 (1)乙が第×条に定める表明保証事項のすべてについて違反していないこと。 (2)甲が、株主総会において本件事業譲渡についての承認決議がなされていること。 |
上記以外にも、契約解除条項、競業禁止条項、役員・従業員の処遇に関する条項など、細かな内容まで定める場合があります。
親族や従業員など顔の見える相手との事業承継であれば、何かしらの信頼関係が構築されていることから、契約書に落とし込む内容も一定範囲に絞りこまれることが多いのに対し、M&Aによる事業承継の場合、どうしてもビジネスライク的な要素が強くなるため、あれもこれも契約書に定めておくという傾向が強くなるようです。
<2022年9月執筆>
※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。