事業承継に関わる専門家の種類

◆税理士(税務を取扱う公認会計士を含む)

事業承継を行う際には、株式をはじめ資産の移動が必ず生じます。資産の移動が生じる場面では必ず税金負担の問題が付いて回ってきます。特に事業承継を行う場合、相続税や贈与税など税金に関する検討事項が多く発生します。
したがって、税金の専門家である税理士の関与は必須となります。なお、一般的には顧問税理士にお願いすることが多いかと思いますが、税理士によっては相続税等の取扱いは行っていないという場合もあります(申告業務は行っているが、いわゆる資産税業務は行っていないと税理士もいます)。したがって、顧問税理士に事業承継問題を依頼しても大丈夫かについては、あらかじめ確認したほうが無難です。

◆弁護士

事業承継対策を実行するに際して、例えば遺留分を意識したり、遺言書作成時の遺言能力といった法律上の課題を検討しる必要があります。また、事業承継特有の問題として会社の支配権を検討する必要があります。このような法律上の問題については、専門家である弁護士が関与することが無難です。

◆司法書士

事業承継財産の1つとして不動産が関係してくる場合、不動産登記の専門家である司法書士を関与させることが無難です。また、種類株式の発行など会社支配権を後継者に集中させるための手段の実行時に商業登記が関係してくる場合、やはり司法書士を関与させることが無難です。

◆経営コンサルタント、中小企業診断士

事業承継の手法としてM&Aを行う場合、ビジネスデューデリジェンスや事業の将来性評価などが重要なポイントとなってきます。このようなアドバイスができる専門家として、経営コンサルタントや中小企業診断士がいますので、必要に応じて関与させるのが無難です。
なお、事業承継を専門的に取り扱うコンサルタント等の場合、各専門家の紹介等も期待できる場合があります。

◆金融機関、生命保険会社、事業引継ぎ支援センター

最近では、事業承継に力を入れている金融機関も多くなってきており、取引銀行によっては様々な支援を受けることが可能な場合もあります。たとえば、自社株の購入資金や相続税などの納税資金に関する資金面で対応もありますし、各専門家や事業引継先とのマッチング機能などもあります。
次に、生命保険会社では、法人保険の活用による自社株評価の引下げ方法や、生命保険活用による相続税納税資金の確保、後継者以外の相続人に対する代償分割資金の準備などを提案してもらえる場合があります。
さらに、各都道府県には事業承継の公的な相談窓口を設置しており、様々な相談に対するアドバイスを受けられる場合があります。
こういった方々についても、必要に応じて活用したいところです。

 


弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

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